IVカーブ測定の目的と実施
IVカーブ(電圧電流特性曲線)測定は太陽電池ストリング及びモジュールの特性変化の把握に有効な事から、一般的に太陽光発電システムの点検必須項目として挙げられている検査である。
IVカーブ測定における主な目的は以下の通りである。
・出力を計測する
・不具合を発見する
・測定した結果をもって発電所の出力そのものを推定する
・定期的な計測により経年の出力低下を判断する
発電所点検における測定範囲は趣旨や目的によって変化する。発電所に設置されているストリング全体から抽出したサンプルの測定結果から全体を類推する場合や、発電不良を前提としたDC側検査の為にストリング100%を測定する場合、サーモグラフィ検査やその他の検査と組み合わせて特定モジュール単体の出力を判断する場合など多岐にわたる。
なお、O&Mにおける定期点検について、発電量の監視に対して現地環境やストリングなどの詳細なデータが収集できる監視装置が導入されている場合、DCの細かな発電状況が把握できる為、特に奇異な数値が計測されない限り100%のIVカーブ測定が不要なケースがある。
発電事業者は限られた予算の中で発電所を維持しなければならず、効果的な監視システムにより、平時の発電量の適切な監視や分析が実施できているならば、定期点検等においては、効果的に測定範囲や周期を設定してO&Mコストを抑制する方法もある。

検査手順の基本は、遮光物を把握し、測定対象に影がかかっていない事を確認の上、測定を実施する事である。
計測にはストリング配置(配線)図を準備し、実施時にどの位置のストリングを計測しているか把握するようにすることが重要だ。結果が不適合と思われる場合に、対象ストリングの遮光や汚れを確認したり、ストリングを構成するモジュール毎の確認検査を実施する場合にもストリング配置図を携帯している方が当然作業効率は向上する。
また、検査趣旨として計測結果のSTC(標準試験条件)換算が重要な意味を持つ場合、IVカーブ測定を実施する機器の他、日射、モジュール温度を計測するセンサーが必須だ。実施にあたっては計測時の環境を十分考慮する必要がある。求められる精度にもよるが、日射強度は700W/㎡以上で安定した天候、南中時±1時間の間に測定するのが望ましい(JISC8953)。
また、必要に応じて抽出したストリングのモジュール洗浄を実施し、洗浄前と洗浄後の出力差により汚れによる損失係数を求める。

測定結果をもってモジュールメーカーと不具合モジュールに関する質問や交渉を行う場合、計測機器自体の正確性を証明する為、校正証明書が要求される場合がある。
その為、計測器はメーカー推奨のサイクルにて校正を実施する事が重要であることも触れておく。